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 韓国の「ノーベル賞コンプレックス」に英科学誌ネイチャーが切り込んだ。科学分野の受賞者が1人も出ない背景を分析、国内総生産(GDP)比で世界最大級の投資を行う韓国に「カネより大事なものがある」と冷や水を浴びせている。

 「韓国が研究開発に世界最大の投資をする理由」と題した特集記事で同誌は、韓国の研究開発投資のGDP比が1999年の2・07%から、2014年に4・29%へと倍増、イスラエル(4・11%)や3%台の日本、2%台の米国や中国を上回っているとした。朴槿恵(パク・クネ)大統領は基礎科学予算の増額で経済危機の回避やノーベル賞受賞という希望を抱いている-と分析する。

 一方で文化的な障壁や官僚的な体質が研究の妨げになっているという研究者らの声を紹介。米国で博士号を取得した韓国人研究者の7割が米国にとどまったことや、女性研究者が同僚と遅くまで酒席に付き合わされるといった内情も明かした。

 人工知能(AI)の「アルファ碁」に韓国人囲碁棋士が敗れると、AI分野に1兆ウォン(約917億円)の投資を表明するなど政府の場当たり的な対応も問題視する。

 ノーベル賞をめぐっては、15年は北里大特別栄誉教授の大村智氏が医学・生理学賞、東京大宇宙線研究所教授の梶田隆章氏が物理学賞に決まり、日本の自然科学分野での受賞は21人になった。

 

 片や韓国は、00年に金大中元大統領が平和賞を受賞しているのみで、自然科学分野ではゼロ行進。「21対0」というスコアも韓国で報じられ、ノーベル賞コンプレックスを刺激している。

 5月末には聯合ニュースが、トムソン・ロイターノーベル賞受賞者予測の担当者にインタビューし、「韓国にもノーベル賞級の研究者がいる」と答えたことを報じたばかり。

 ネイチャーの記事は現実の厳しさを突きつけた形となったが、韓国メディアでは「指摘の通り」(朝鮮日報)と報じるなど、総じて素直に受け入れる論調が目立った。

 韓国問題に詳しい週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏はこう語る。

 「日本が基礎科学への投資を始めたのは明治維新の1868年からで、それから約80年後に湯川秀樹博士がノーベル賞を受賞した。韓国が本格的に基礎科学投資に着手したのは77年からであり、科学研究が世界レベルになるまでに時間を要するのもやむを得ない。ことさらに日本をライバル視する必要はないのではないか」